小説家の坂口安吾(1906~1955)は囲碁や将棋が好きだったし、観戦記やエッセイも残している。
その中に「勝負師」というエッセイがある。今は大変ありがたい時代で、ネットの青空文庫で読むことができる。
それによると、木村義雄名人にゼドリン(アンフェタミンのことらしい)の使用を勧めたことがあったらしい。
木村義雄は明治38年(1905年)生まれなので、昭和20年代前半には40歳を越えていた。今の40歳代と違って昔の40歳代は結構な年齢だっただろう。初老の一歩手前くらいの年齢ではなかっただろうか。
食糧事情も今とは大違いだろうし、木村名人が体力不足、スタミナ不足であっても不思議ではない。
木村vs升田の重要な対局の前に、坂口安吾は木村名人にゼドリンを勧めた。その対局で木村は勝った。ゼドリンのおかげで勝ったのかどうかは判らないが、ゼドリンの使用が木村のスタミナ不足を補ったであろう事は大いに想像出来る。
木村の名誉のために念のために書いておくが、その当時、覚醒剤は法律で禁止されているわけではなかった。覚醒剤取締法が制定されたのは昭和26年である。恐らくゼドリンやヒロポンは一種の強壮剤の扱いであっただろう。「脱法ドラッグ」でも「違法ドラッグ」でもなく、「合法ドラッグ」だったのではなかろうか。
しかし、今現在「木村名人は現役生活の晩年、ドラッグを使っていた」というのは聞こえが良くないのも事実である。 現在の棋士は、使用禁止薬物を使って将棋を指しているのだろうか?私にはそうは思えないが、こればかりは当事者以外にはわからないことである。
【本日(2019年9月6日)のニュース】
・ラグビーの壮行試合で、日本代表は南アフリカ代表に7-41で完敗。