令和に囲碁と将棋を語る

奈良県在住。囲碁はパンダネットや幽玄で6段、野狐で4~6段、将棋はぴよ将棋で1級程度です。

【読書】 「世界のあらゆる悩み」(アイザック・アシモフ著『停滞空間』より)

SFの大家・アシモフの短編に「世界のあらゆる悩み」という作品がある(短篇集『停滞空間』ハヤカワ文庫)。

舞台は未来の地球。
世界は、マルチヴァクという超高性能のコンピューターによって運営されている。
一部の人々は、その状況に満足せず、マルチヴァクを壊して社会運営を人間の手に取り戻そうとするが、大多数の人間は現状に満足している。

 マルチヴァクは、貧困・治安だけでなく、人間のいろいろな悩みを解決するように至った。
それだけならいいのだが、「いろいろな悩み」を通り越して人間たちの「あらゆる悩み」に対処しなければならなくなった。
その結果、マルチヴァクそのものが疲れて果ててしまい、自らの「死」を望むようになった。。。というお話。

この話を私が取り上げたのは、単にこの話が好きだからではない。

たとえば今の病院はどうだろう?
完全からは程遠いが、医療の世界は日進月歩、進歩を続けている。
今までであればあきらめるしかないような病気も、病気によってはそれが直るようになった。
平均寿命も延びている。世界トップクラスである。
出産のリスクも大幅に減じた。
それでも人々(医療関係者以外のほとんどの人)の欲望は減じない。
「○○直してくれ」「△△を何とかしてくれ」「早く来てくれ」「何で早く見てくれないの?」「医療費が高いぞ」「鐘のことを言うな。人を救うのは医者の役目だろ?」などなど。
そして、結果がうまくいかなければ下手をすると訴訟になる。

言うまでもなく、病院はマルチヴァクのごとく万能でもなんでもないが、人々のいろんな悩み(そしてともすると現在の医療技術・医療体制のキャパシティを超える)を持ち込む。
「病院にいけば何とかしてくれるかも・・・」を通り越して「何とかしてくれるはずだ」「してくれなければならない」と言う人まで出てくる。
そして、機械ならぬ人間の集合体である医療関係者は、どんどん磨り減っていく。

これは医療に限った話ではない。
たとえば、学校なんかも似たようなところがあるのではないか?
一人の教師が受け持つのは1人でも二人でもない。
数十人単位に対して教育を施している。
その教育がうまくいく生徒もいればそうでもない生徒もいるだろう。
1人か二人に対して教育を施しなおかつ必ずしもうまくいっているかどうかわからない。
そんなことは、両親自身がよく知っているはず。
しかし、何か問題があると、学校や教師を責める。
あたかも、教育に関しては学校に任せておけば大丈夫だと言っているかのように。

「あらゆる悩み」を解決する機関も機械もまだ存在しない。
レベルをぐっと落として「いろんな悩み」を解決する機関や機械さえ、なかなか作るのが難しいのが現状である。
要するに、問題やアクシデントは「起こるときには起こる」わけであるだが、そのことに目をつぶる、または気づかないふりをしている人間が少なくないこと、そして彼らの一部が世間に対する発言力が大きい。
それこそが「悩みを引き受ける」機関や人間にとっての「大きな悩み」かもしれない。

 

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