令和に囲碁と将棋を語る

奈良県在住。囲碁はパンダネットや幽玄で6段、野狐で4~6段、将棋はぴよ将棋で1級程度です。

【読書】『声の網 』(角川文庫)

『声の網 』(角川文庫)という本がある。ショートショートの名手である星新一が書いた長編小説である。

星の小説には珍しく、人の呼称が「エヌ氏」のような漠然とした感じではなく、「洋二」や「黒田」のような固有名詞になっている。(他の作者の作品では当たり前なんだけど)  

ある商店を経営している老人のところに電話が入る「間もなくお前のところに強盗が来る」そして実際、強盗はやってきた。なぜ?  

ある男のところに電話が入ってきた。電話をかけてきた側は、男の旧悪を知っていた。  

ある女のところに電話が入ってきた。その女がこないだ浮気をしたのを知っていた。電話をかけてきたのが誰なのか、誰にもわからない。

ただ言えることは、電話をかけてきたその「男」は、あらゆる情報を得ている。そして、必要なときにはその情報を武器に、人々の行動をコントロールする。だが、決して人々を破滅に追い込むことはない。  

一部の人々が、その「存在」に気づき、その存在を覆そうとするが、失敗に終わる。それでも、その「存在」は、人々を破滅にまでは至らしめない。満足とはいえないが、平穏な暮らしを人間に提供する。   

あるとき、人間の社会がより平穏になっていったそのとき、老人はあることを思い立つ。この「存在」はひょっとして「神」なのではなかろうか、と。

老人は電話の応答サービスに「神は本当にあるのでしょうか?」と尋ねる。すると電話は・・・  

という話。

伝達手段が電話という時代の小説である。1970年代に書かれたのだが、30年以上前に書かれたとは思えない新鮮さを感じる。

実際の我々の社会がこのように「成熟」するとは考えにくいけれど・・・  

他のSF作家なら、この小説の終わりの部分を出発点にして作品を作っていくかもしれない。たとえばフィリップ・ディックみたいな作家なら。

この得体の知れない「存在」が人々を守りコントロールするその社会。それに対して主人公は・・・なんて話、ディックならそんな風に作っていくかもしれない。材料が一緒でも、作者次第で料理法が変わるかもしれない。そこがまた興味深いところである。 

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
にほんブログ村