令和に囲碁と将棋を語る

奈良県在住。囲碁はパンダネットや幽玄で6段、野狐で5段、将棋はぴよ将棋で1級程度です。

【読書】「魔法の村」(短編集『終点:大宇宙!』より)

『宇宙船ビーグル号』や『非Aの世界』『イシャーの武器店』などの作品を残したヴァン・ヴォークトの短篇集、『終点:大宇宙!』。

ここにおさめられている作品は
「はるかなりケンタウルス
「怪物」
「休眠中」
「魔法の村」
「ひとかんのペンキ」
「防衛」
「支配者たち」
「親愛なるペンフレンド」
「音」
「捜索」
の10個。

そのうち、恐らく評価が高いのは「捜索」「音」「怪物」ではないかと思う。特に「捜索」は、河出文庫から出ているSF選集にも載っていたと思う。

この短篇集を買ったのは30年以上前ではないかと思う。最初は『終点:大宇宙!』というタイトルにつられて買った。短篇集と言うことで、「これなら読めるだろう」ということもあった。

最初読んだとき、「面白い」「出来の良い短篇集」というのが正直な感想。その中でも「はるかなりケンタウルス」「怪物」「親愛なるペンフレンド」「捜索」が印象に残った。

でも、今手にとって読んでみると、多少印象が変わったというか、前はそれほど印象に残らなかった「魔法の村」が今ではちょっとお気に入りになった。まあ、他の作品がダメだというわけではないのだが。

 

「魔法の村」は火星の沙漠をさまよっている男(地球から火星探検にやってきたチームの唯一の生き残り)が、疲れ果てた末、かつて火星人が住んでいた村にたどり着いたというところから始まる。

ジェナーという名のその男、休息の場にたどりついて喜んだのもつかの間、新たな問題を抱えることに。何と言ってもその村は「火星人の為の村」だったので、地球人のジェナーにとっては快適ではなかったのだ。

幸いその村は非常に優秀で、村が一つの精神を持っていた。村は何とかしてジェナーの役に立とうとするがなかなかうまくいかない。ジェナーはどんどん衰弱していくばかり。そして最後に・・・という物語。

最初読んだときには「ああ、よかった。ジェナー、助かったんだね」という感想で終わるのだが、よく読むと・・・。という結末。これ以上はネタバレになるので書かない。

是非読んでもらいたい話であり、読んでもらいたい短篇集である。各作品が書かれたのは1940年代から1950年代にかけてだが、今でも十分読めると思う。