タイトルが「分身」ということで、読む前は二重人格(あるいは多重人格)がテーマかと勘違いしていたが、読んでみると遺伝子や出産がテーマであった。
二人の女性「鞠子」と「双葉」の行動が交互に語られる。そして最後に・・・という結末である。
必ずしも簡単な物語ではないのだが、それでもあっという間にページが進んだ。東野の文章がうまいのかどうかは私ごときではわからんが、読みやすい文章とはいえるだろう。
個人的にはラストが少しあっけなかったのが残念だった。あの後、2人がどのような人生を歩み始めるのかも読みたかったのだが・・・。まあ、作者はそこの部を読者の想像にお任せしたのだろう。
「進みすぎた科学の闇の面」「ひりひりするようがサスペンス」ばかりでなく、「母の愛の強さ」も感じさせた小説であった。特に若い人にこの小説をお勧めしたい。