数日前のことである。私のところに翻訳の依頼が来た。
内容も分量も大したことはないのですぐにできるかと思っていた。
しかし案外時間がかかった。
手書きの文章(しかも筆記体)だったからである。
本当に時間がかかった。時給に換算すると、とてつもなく低くなりそうだ。
ああだこうだ考えながら、読んでいく。
ほとんどの単語は解読できたが、いくつかの単語がわからない。
わからないときは、黄色のマーキングをして「判読不能」とコメントしておく。
そして翻訳会社に翻訳結果をメールで送った。
わからないものはわからない。読めないものは読めないのだから、これ以上のことは私にはできない。
ただメールの中で「今後は筆記体の案件はよこさないでください。よこす場合はワープロの活字体にしてから送ってください」と書いておいた。
それから数時間後の翻訳会社からの返信には「すみません。今後はそうさせていただきます」「弊社にて文字起こししたのでもう一度お願いします」と書かれていた。
活字体なら、お安い御用である。ささっとすませて再び送った。
今回の翻訳案件はこれで一件落着である。
さて。
仕事柄、手書きの外国語を読んだり翻訳することはたまにある。
日本人が書いた筆記体(その多くは学生)は比較的読みやすい。
恐らく、彼らが筆記体を学んだ時に使った手本に忠実に書くからであろう。
それに対して外国人の書いた筆記体はそれに比べると読みにくい。
恐らく、普段筆記体を書き慣れているものだから、その人の癖がより強く筆跡に反映されるからではなかろうか。
パソコンやスマホで文字を書き、読むのが普通となった今の時代である。筆記体と出会うのは新鮮な経験ではあるが、あまり歓迎はしたくない。