令和に囲碁と将棋を語る

奈良県在住。囲碁はパンダネットや幽玄で6段、野狐で5段、将棋はぴよ将棋で1級程度です。

【読書】モーパッサン「二人の友」

『モーパッサン短編集 (3)』 (新潮文庫)の中に、「二人の友」という短編小説がある。

 時代は普仏戦争時だから1870年代だろう。舞台はパリ。二人の釣り好きなフランス人がいた。あるとき、二人で釣りに出かける。信じられないような大漁!・・・とそのとき、彼等の背後からプロシア兵がやってきた。彼等に捕まって連れて行かれた彼等は・・・と言う話。

 戦時中の中での小市民たちのちょっとした心のふれあい。そして大漁は、過酷な運命をたどる彼等へせめてものはなむけか。

 ポカポカ暖かい日常が一転、ドイツ人の尋問を受ける羽目になった二人。二人の不幸なフランス人は、気の利いたいいわけもせず、嘘もつかず、正直に殺されてしまう。そして彼等は石を足にくくりつけられ、川に投げ込まれる。その死体は


「石の重さで足を先にして、突っ立ったまま、河の中へ沈んでいった」。


 一方、かわいそうな二人が釣った魚は、何事もなかったかのように、ドイツ人のためにフライにされるのであった。

 二人の市民が不条理に、無造作に消されていくのを、あたかも日常的なことが起こったのに過ぎないかのごとく、作者は描いている。少しだけ怖い作品。そして私が好きな掌編である。