令和に囲碁と将棋を語る

奈良県在住。囲碁はパンダネットや幽玄で6段、野狐で5段、将棋はぴよ将棋で1級程度です。

読書

【読書】苦役列車(西村賢太作、新潮文庫)

『苦役列車』(西村賢太作、新潮文庫)を読んだ。 今の中学生や高校生に一度読んでもらいたい。彼らの10人に9人までは「自分たちはこんな主人公みたいな人間には絶対ならない」と思っているだろう。残りの1人は「少しは頑張らないと、俺もこうなるかも」…

2月26日のメモ:「坊ちゃん」「かわいい女」「浜村淳」「損切りはつらい、その後もつらい」

2月26日(土曜日)のメモ。 【坊ちゃん(夏目漱石・作)】 久しぶりに読んでみた。 松山での主人公の教師としての生活よりも、東京にいる清(きよ)が心に残った。 無償の愛情と忠誠を主人公に捧げたまま死んでいった、このおばあさん。 自分勝手で気短な主…

【読書】「マーン城の喪主」(短編集『ブラウン神父の秘密』より)

『ブラウン神父の秘密』 (創元推理文庫) もうだいぶ前、20年以上前に買った短篇集。 収録されている作品は10個。 もっともそのうちの「ブラウン神父の秘密」と「フランボウの秘密」は序章と終章の役割を果たしているので、ミステリとしての作品は8つと…

9月3日付の雑記:「眠りの森(東野圭吾作、講談社文庫)」「菅義偉首相、次の総裁選には出ず」

【眠りの森(東野圭吾、講談社文庫)】 最近物忘れがひどいので、登場人物をメモしながら読み進めた。 その苦労(?)にふさわしい、いい作品だったと思う。 ラストのシーンを見ると、2時間モノのドラマで使っても良いかもしれない。 解決後の加賀刑事を知り…

【読書】シャーロック・ホームズの秘密ファイル(ジューン・トムスン作、創元推理文庫)

短編集「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」(創元推理文庫)を読んだ。 収められている作品は短編7作。 ミステリーとして面白いと私が思ったのは「消えた給仕長」であった。 その他は「ホームズを主人公とした物語」といった感じであり、ミステリーと…

【漫画】「生きているということは・・・」(『葬送のフリーレン』第5巻より)

最近読んだコミックのセリフを紹介する。 ヒンメル「生きているということは、誰かに知ってもらって覚えていてもらうことだ」 フリーレン「覚えていてもらうためにはどうすればいいんだろう?」 ヒンメル「ほんの少しでいい。誰かの人生を変えてあげればいい…

【漫画】「誰にでも勝つチャンスがあるように見える。 だから勝負が成立する。」

麻雀というのは 誰にでも勝つチャンスがあるように見える。 だから勝負が成立する。 (中略) つまり、 すぐに負けを認めたり引き分けでいいと思う人間から、 金は取れないということだ。 (押川雲太朗作『Let’s go ! なまけもの』第56話 より) 前半部分は…

【読書】「俳優とアリバイ」(チェスタトン作)

ブラウン神父の秘密 (創元推理文庫) ブラウン神父が活躍するこの短篇集の中に「俳優とアリバイ」という作品がある。「景気が今ひとつの劇場の支配人が殺されたが、犯人は?」というお話。 「犯人は誰か」「その動機は?」といったことよりも私の心に残ったの…

【読書】パラドックス13(東野圭吾作、講談社文庫)読了

パラドックス13(東野圭吾作、講談社文庫)を読み終わった。 ウィンダムの「トリフィド時代」を思わせるようないわゆる「破滅モノのSF」である。 さすが東野圭吾というべきか、500ページを超える分量でありながら、さくさくとページを進めることが出来た。 …

【読書】アシモフ「ナンバー計画」

SFの大家・アシモフの短編の中に『ナンバー計画』という作品がある。短編集『停滞空間 』(ハヤカワ文庫 SF 357)に収められている。最近再読してみたので、ちょっと紹介したい。 時は未来。何でもコンピューターがしてくれる便利な時代なのだが、技術が進みす…

【読書】フレドリック・ブラウンの短編「笑う肉屋」の感想+4月14日の出来事

フレドリック・ブラウン作の短編集「真っ白な嘘」(創元文庫)を購入した。読んだ短編作品についてメモを残しておく。 「笑う肉屋」の感想 平凡な私は「(この事件では)気球やヘリコプターを使ったのではなかろうか」と思っていたが、結末を読むと全く違っ…

【読書】東野圭吾作「虚ろな十字架」(光文社文庫)の感想メモ

東野圭吾作の作品「虚ろな十字架」(光文社文庫)を読んだので少しメモする。 強い信念は時には物事を推進する強い力となり、時には悲劇の原因となる。 愚鈍そうに見える花恵が最後に賢者ぶりを見せてくれたのが少し痛快だった。 最近年を取ったのか、登場人…

【読書】東野圭吾作「犯人のいない殺人の夜」(光文社文庫)の感想メモ(その2)

東野圭吾作の短編集「犯人のいない殺人の夜」(光文社文庫)を久しぶりに読んだ。 7つある短編のうち、今回は後半3つの短編の感想を軽く書く。 「白い凶器」 この作品を読み終わった後にタイトルを見直したとき、「なるほど」と思った。 「さよならコーチ」…

【読書】東野圭吾作「犯人のいない殺人の夜」(光文社文庫)の感想メモ(その1)

東野圭吾作の短編集「犯人のいない殺人の夜」(光文社文庫)を久しぶりに読んだ。 7つある短編のうち、今回は4つの短編の感想を軽く書く。 「小さな故意の物語」 高校生・達也の死と彼を含む三角関係を描いた、ちょっとだけ甘くて苦い物語。 結末は予期でき…

【読書】『秘密』(東野圭吾作、文春文庫)

『秘密』(東野圭吾作、文春文庫)を読んだ。 ・妻と娘がバス事故にあう。 ・妻は死亡、娘は生き残る。 ・しかし娘には妻の魂が宿り、「肉体は娘だけど自我は妻」の状態になる。 ・生き返った娘に最初は喜ぶ主人公だが、娘の成長とともに、嫉妬、とまどい、…

【読書】東野圭吾作「分身」(集英社文庫)

東野圭吾作「分身」(集英社文庫)を読んだ。 タイトルが「分身」ということで、読む前は二重人格(あるいは多重人格)がテーマかと勘違いしていたが、読んでみると遺伝子や出産がテーマであった。 二人の女性「鞠子」と「双葉」の行動が交互に語られる。そ…

【漫画】月刊コミックバンチ(2020年12月号)についてコメント

月刊コミックバンチ(2020年12月号)についてコメント 「死役所」(p111) スマホを頼りに、あちこちの男と連絡を取り合って寝床を確保していく家出少女。現実にこういう少女は、数は少ないだろうが、いるんだろう。。。 今回の話は前編。今後に期待。 「子…

【漫画】月刊コミックバンチ2020年11月号についての感想

この前売り出された『月刊コミックバンチ 2020年11月号』を読んだので、少しコメントする。 【LINK MAN】(新連載) イギリスで大活躍した若い日本人サッカー選手。その彼が次に入ったチームは、日本の3部に所属している弱小チームだった。。。という話。 【…

【将棋】雑誌「Number 9月17日号」を買ってきた。

スポーツグラフィック雑誌のNumberが、珍しく将棋特集をしていたので買ってみた。 70ページくらいにわたっているので、「将棋特集」といってもいいだろう。いろんな人がいろんなことを書いているが、個人的には、先崎のエッセイ、白瀧呉服の記事、佐藤和俊の…

【読書】最近読んだ本や漫画

◎『むこうぶち』(第54巻、近代麻雀コミック) 今まで読んだ中で一番期待外れであった。面白くないというほどではないが、「もう一度読もう」という気にならなかった。5つのエピソードのうち、「青春のオマージュ」が少しいい味を出していたかな。ともかく、…

【読書】「魔法の村」(短編集『終点:大宇宙!』より)

『宇宙船ビーグル号』や『非Aの世界』『イシャーの武器店』などの作品を残したヴァン・ヴォークトの短篇集、『終点:大宇宙!』。 ここにおさめられている作品は「はるかなりケンタウルス」「怪物」「休眠中」「魔法の村」「ひとかんのペンキ」「防衛」「支…

【読書】「万華鏡」

20世紀SF〈1〉1940年代―星ねずみ (河出文庫)の中に収められている「万華鏡」という短編を紹介する。レイ・ブラッドベリ作。15ページほどの短さなので、誰でも読めるだろう。 ロケットが爆発し、乗組員が宇宙に投げ出されるところから、この話は始まる。バ…

【読書】「宇宙船乗組員」(ブラッドベリ作『ウは宇宙船のウ』に収録)

2012年6月5日に亡くなったレイ・ブラッドベリの短篇集『ウは宇宙船のウ』。16ある短篇のうち、どれが代表作かと言われると困る。個人的には「霧笛」「長雨」「霜と炎」あたりかなあと思うが、他の読者は別の作品を選ぶかも知れない。 今回は、「宇宙…

【読書】星新一のショートショートを2つ紹介

私がかつて愛読した星新一のショートショートを2つ紹介する。作品名も、収録されている本も覚えていない。でも、あらすじはちょこっと覚えている。 ] その1. ある研究所に男が忍び込み、博士を脅してとある銃を盗み去った。なんでも、新型の銃らしい。こ…

【読書】『軍事史学』第五十四巻第一号「一九四二年枢軸結合戦略の可能性-マダガスカルを巡って」について

私は、名目上ではあるが、軍事史学会の会員である。定期的に学会誌が自宅に来る。その内容の大部分は私には難しすぎるか、或いは私の興味をあまり惹かないかである。 私の元に届いた『軍事史学』第五十四巻第一号の中に「一九四二年枢軸結合戦略の可能性-マ…

【読書】モーパッサン「二人の友」

『モーパッサン短編集 (3)』 (新潮文庫)の中に、「二人の友」という短編小説がある。 時代は普仏戦争時だから1870年代だろう。舞台はパリ。二人の釣り好きなフランス人がいた。あるとき、二人で釣りに出かける。信じられないような大漁!・・・とそのとき、…

【読書】鋼鉄都市(アシモフ作、ハヤカワ文庫)

「ファウンデーションシリーズ」や「ロボット三原則」で有名なアイザック・アシモフが書いたロボットミステリ『鋼鉄都市』の紹介する。この『鋼鉄都市』で描かれている世界設定は以下のようなものである。 「地球人」と「宇宙人」の対立「宇宙人」とはいって…

【読書】モーパッサン「幸福」

『モーパッサン短編集 (1)』 (新潮文庫 )の中に、「幸福」という短篇がある。 場所は19世紀のコルシカ島。この島を訪れたフランスの老婦人が島の片田舎でかつての顔見知りの老婦人に出会う。彼女は金持ちの家のご令嬢だったのだが、数十年前にとある兵士と…

【読書】エリック・フランク・ラッセル「証言」

『20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり〉 (河出文庫)に収められている「証言」(ラッセル作)を紹介する。 舞台は、地球。そして、裁判所がこの作品の舞台である。恐らく、アメリカの裁判所ではあるまいか、と思う。検事がいて、判事がいて、弁護士がいて、…

【読書】リチャード・マシスン作「終わりの日」

私の好きな短編の一つに、リチャード・マシスン作「終わりの日」というのがある。20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり (河出文庫)に収められている短編である。この作品は人類破滅モノなのにもかかわらず、妙に暖かい、そして優しい雰囲気を持った作品だ。 舞…