海軍乙事件 (文春文庫)(吉村昭)という本の中に、「八人の戦犯」という話がある。
日本側が裁いた戦犯の話である。そのうちの3人を取り上げている。
その3人のいずれも、彼らなりの理由で部下の罪を引き受けてしまった。部下の罪とは、捕虜に対する暴力や殺人であった。
そして、日本軍からそれぞれ有罪判決を受けた。その後、彼らは今度は連合軍によって再び裁判を受けた。
その結果は、日本軍による判決よりも重い刑罰であった。あるものは懲役30年、またあるものは終身刑であった。
部下の罪を引き受けてしまったばかりに不当に重い刑罰を食らってしまったわけである。
幸い、3人とも途中で刑を軽くしてもらって釈放されたから、まだいい方だったと言えるだろう。
彼ら3人とは違い、処刑されたものもいれば、獄中で死んだものもいるだろう。
また、本来なら起訴されるべきところをうまくすりぬけた者もいるはず。
自分の罪でもない罪を背負うことは、果たして美談といえるか、それとも「自分を大事にしていない」として非難の対象になるか。
これは論ずる人によって異なるだろうし、他人の罪を背負った人の精神状態にもよる。
無論、本人が納得ずくで他人の罪を背負ったのなら、まあいいのかな、という気もする。
いずれにしろ、納得できないこと、義務でもないことを背負い込むと、後でとんでもない目に会うということ。この話はそのようなことを私に教えてくれているように思う。