「カーテン」(アガサ・クリスティー、ハヤカワ文庫)を読んだ。
いつかは読もう読もうと思いつつ、数十年たった。
私が年を取った今、初めて読んだのだが、ポワロもヘイスティングスもまた、年を取っていた。
ポワロも往年の快活さが影を潜め、ヘイスティングスもまた、亡き妻や自分の思い通りにならない娘達に悩まされている。
スタイルズ荘も、以前のようではない。
そこに住む人々は、経済的にはともかく、何か悩みを抱えている。
ポワロがヘイスティングスをスタイルズ荘に呼んだのは、ここで「行われようとしている」殺人を彼に食い止めようとしてもらうためである。
ポワロは体が不自由で車いす生活なので、彼の代わりにヘイスティングスが動く必要があった。
ただ、犯人のXについて、ポワロはある程度見当がついているようだが、ポワロはヘイスティングスに伝えない。
Xが誰を狙っているのか、わからない。
いつ狙うのかもわからない。
わからないことだらけである。
物語中盤以降に殺人が起こり、そして最後に・・・。
ここであまり詳細を書くのはネタバレになるのでここまでにしておく。
私が若い頃に「カーテン」を読まずに年を取った今読んだ。それはひょっとしたら良いタイミングだったのかもしれない、と思う。
この作品を読んで、ヴァン・ダインのある作品とクィーンのある作品を思い出した。
前者の作品を思い出したのは、スタイルズ荘のなんとも言えない陰鬱な雰囲気が理由である。
後者の作品を思い出したのは、「カーテン」のラストが理由である。
私も年を取り、ポワロも、ヘイスティングスも年を取った。しかしこの作品は年を取らない。