私が昔読んでいた短篇集『黒後家蜘蛛の会2』(アイザック・アシモフ作)の中でお気に入りの作品の一つに「鉄の宝玉」というのがある。
宝石集めを楽しみにしている男がいた。彼のコレクションの中に「鉄の宝玉」というのがあった。「宝玉」とはいっても、実は隕石の鉄である。宝石としての価値は高くない。
あるとき、「鉄の宝玉」を500ドルで買いたいという男がいた。なんということのない隕石をなぜ買いたいと申し出たのか。結局、この男に「鉄の宝玉」を売ることはなかった。しかし、なんで「鉄の宝玉」を500ドルで買おうとしたのか?・・・
というお話。例によって「黒後家蜘蛛の会」のメンバーがあれこれ説を出すが、ぴったりとした説明をすることができない。そしていつものごとく謎を解いた(と思われる)のは給仕のヘンリーだった。
この短篇集の中では、「追われてもいないのに」「電光石火」「終局的犯罪」そして「鉄の宝玉」がミステリとして優れているような気がする。もちろん、他の短篇も読み物としては結構面白いので、古本屋なりヤフオクで安く売って入れば、買って読んでみればよいと思う。