【読書】鋼鉄都市(アシモフ作、ハヤカワ文庫)
「ファウンデーションシリーズ」や「ロボット三原則」で有名なアイザック・アシモフが書いたロボットミステリ『鋼鉄都市』の紹介する。この『鋼鉄都市』で描かれている世界設定は以下のようなものである。
「地球人」と「宇宙人」の対立「宇宙人」とはいっても地球人と全くかけ離れた存在ではない。ここで出てくる「宇宙人」とは、かつて地球を離れて宇宙に植民地(植民惑星というべきか)を作った人間達である。
彼等はその後、地球から独立し、さらには地球人よりも有利な立場にある。地球人は「宇宙人」を嫌い、また大多数の「宇宙人」は地球人を見下している。
増え続ける地球の人口と「鋼鉄都市」小説の中での地球の人口は約80億人です。そして殆ど全ての地球人は、巨大なドームに覆われた「鋼鉄都市」のなかで暮らしている。
ドームの中でくらし続け、そこでの生活に適応仕切った地球人は、ドームの外の生活が出来ないばかりでなく、ドームの外に出ることが出来なくなってしまった(法律的に出来ないわけではない)。
人間とロボットの対立地球では、人間とロボットの対立が露わになっていた。ロボットの存在が多くの人間の雇用を奪っているという現実があるからである。
多くの地球人は貧しく、食べていくのがやっとの状況でだった。そして、ロボットに対する暴力や暴動事件が起こっていた。
『鋼鉄都市』の世界設定は、大まかに言ってこんな感じである。
さて。物語について軽く触れる。
主人公は刑事をしているイライジャ・ベイリ。彼は警視総監からとある事件の捜査を命じられる。「宇宙人」である1人の学者が殺されたので、その犯人を捜せというのである。
そしてベイリのパートナーとして「宇宙人」側から派遣されたのがダニールだった。実はダニールは人間そっくりに作られたロボットだった。
戸惑いを抱えたまま、ベイリの捜査が始まります・・・。というお話である。
「SFミステリの傑作」と言われることもあるようだが、私にとっては「ミステリーの要素を抱えたロボットSF」である。もちろん、ミステリとしてダメだというわけではない。
『鋼鉄都市』は、ベイリがダニールと共同作業をしていきながら、「地球と宇宙」「人間とロボット」「地球人と宇宙人」について考えていく話である。
そこにミステリの要素が入っているわけである。最後に事件が解決した後、ベイリはダニールと腕を組んで立ち去る、というところでこの小説は終わる。人間・ベイリとロボット・ダニールの友情が出来た瞬間だが、もちろん、地球人と宇宙人との友好にはまだまだ遠い状況である。
ベイとダニールはその後、『はだかの太陽』で活躍することになる。ロボットものが好きな人、ミステリが好きな人は、この『鋼鉄都市』を読んだら楽しめるかも知れない。
アシモフの小説は(面白い、面白くないは別として)比較的読みやすく、ストーリーを追いやすいものが多いので、おすすめしやすい。